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SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.21, No.6 December, 2012

≪会議報告≫

2012 年秋季低温工学・超電導学会　

(2012 年 11 月 7 日～ 9 日　＠いわて県民情報交流センター ( アイーナ ) 、盛岡市 )

【 A15 線材】

　A15 化合物超伝導線材に関する発表は、口頭では Nb 3 Al が 4 件、 Nb 3 Sn が 3 件、解析手法に関して 1 件、ポスターは 3 件あった。
　 Nb 3 Al では、最初に NIMS の飯嶋から急熱急冷処理における通電加熱距離の特性に及ぼす影響について報告された。通電加熱距離を変更することで、急冷速度と切り離して加熱時間を独立変数として検討した。通電距離は 100 、 300 、 470 mm とした。その結果、通電加熱距離を長くし単位長さ当たりの電力を小さくすると T c 、 J c 共に向上すると報告された。今回は単芯線材での結果であるが、今後最適化のために多芯線材での調査も期待したい。
　 KEK の金からは Nb 3 Al の中性子回折測定に関してポスターと合わせて 2 件報告があった。 800 ℃での保温過程におけるピーク強度の変化を調べたところほぼ変化がないことが示され、相転移が初期段階で完了しているというこれまでの知見が中性子回折でも確認された。加温時の相変態過程は X 線でもすでに調べられているが、中性子結果でも同様の傾向を示した。
　 Nb-Al 前駆体線材の断線リスクを低減することを目的とした新しい線材断面構成については、 NIMS の竹内、伴野からそれぞれ別の構成が提案された。前者はバリアに Nb/Ag/Nb 三層構造を導入するもので、良好な加工性が得られた。 Nb と Ag は全く反応しないということが強調され、 Nb と Al の反応過程への悪影響がないことが報告された。後者では、延性の優れた Nb バリアフィラメントと延性の低い Ta バリアフィラメントを組み合わせて、断線リスクを抑えるように最適配置し、同時に磁気的フィラメント結合の増大を防ぐ断面構成について報告された。
　大阪合金の谷口は、ブロンズ法 Nb 3 Sn において高 J c 化に効果があるとされるブロンズ中の Sn 濃度の増加を試みており、今回は熱間押出し時に重要となる Ti 添加高 Sn 濃度ブロンズの高温での機械的特性について報告した。 Ti 添加高 Sn 濃度ブロンズは 400°C までは大きな硬度を示すが、それ以降は汎用ブロンズと大差がなくなることが報告された。また Ti 添加によって 400°C 以上での伸び率の改善もみられている。
　また太刀川からは Cu-Sn に Zn を加えた 3 元ブロンズの組織や機械的特性が報告された。鋳塊では Zn は a 相に均一に含まれ Zn-Ti 等の Zn 基化合物は見られない。また Zn の Sn 当量を 0.5 とすると、試料の Sn 当量が 16.0 に近づくと d 相が現れる。 Zn を入れると、 Sn 当量が 2 元ブロンズの 14Sn-0Zn-0.3Ti 試料よりも大きい場合であっても硬さの増大が抑制されており、従来材に比べて加工性の改善が期待できる。
　東北大の小黒からは Nb ロッド法により作製した CuNb による補強 Nb 3 Sn 線材の機械的特性と超伝導特性について報告された。この方法はあらかじめ CuNb 合金を準備する必要がなくコストダウンが期待できる。引張り応力に対する I c 特性を見ると、 I c のピーク位置は高応力側に移動しており、より大きな電磁力に耐えられることが示された。
　上智大の濱野からは大型 CIC 導体における素線座屈現象の理論解析について報告があった。素線 ― コンジット間の熱収縮係数の違いによる導体変位を、弾性論の範囲でモデル化し時間関数となる運動方程式を解くことで導体の変位を追っている。馴染みが薄いこともあり質疑でも活発な議論がなされた。
　ポスターでは、大同大の富田から Nb 3 Sn 線材の機械的特性におけるツイストの影響を有限要素法により解析した結果が報告された。まだツイストの効果について明瞭な傾向が見られていないが、今後解析手法の改善によるデータの信頼性の向上を期待したい。
　富山大の村上からは、核融合研との共同研究で取り組んでいる高 Ga 濃度 TiGa 3 化合物を利用して作製する V 3 Ga 線材の組織観察と方位関係について報告された。単芯材での反応界面を TEM により観察し、 [113] V//[122]V 3 Ga 、 (110)V// (201)V 3 Ga などの結晶学的方位が確認されたと報告があった。( 物材機構　伴野信哉 )

【超伝導応用】

　多くの分野で HTS 機器の開発が進展しつつある中、超電導応用に関するセッションも大変充実したものであった。「産業応用」、「 Y 系パンケーキコイル」、「電気機器」、「電力機器」、「核融合 /NMR 」、「送電ケーブル」、「 HTS コイル」、「加速器 / サイクロトロン」、「 Y 系コイル」、「 HTS コイル技術」、「磁気分離」、「医療応用」、「回転機」、「 LHD&JT-60SA 」、「 ITER 」、「 SQUID 応用」といった項目が並び、プログラムを見ただけでも機器応用へ向けた勢いが感じられた。ここでは筆者等が聴講できた講演の中からいくつかご紹介したい。
　「 Y 系パンケーキコイル」では、長屋 ( 中部電力 ) らは、パンケーキコイル高強度化のための新コイル構造について報告した。 Yoroi-coil と称するコイル側板で電磁力を支持する新しい構造のコイル化手法を考案し、線材強度の限界を超える電磁力に耐えることを解析と検証試験で実証した。
　「電力機器」では、寺尾 ( 東大 ) らは、構造の異なる 10 MW 級超電導風力発電機の電磁特性の比較について報告した。永久磁石型はサイズやコスト面で課題が多く、超電導突極型および全超電導型は、コンパクト化、低コスト化でメリットがあることを解析的に導いた。
　「 HTS コイル」では、川嶋 ( 神戸製鋼 ) らは、 Bi2223 テープ線材を用いた 3 T MRI 超電導マグネットの開発について報告した。 Bi2223 テープ線材を 44.6 km 用いて室温ボア 500 mm のマグネットを製作し GM 冷凍機で 7 K まで冷却して、均一度 5 ppm で中心磁場 1.5 T を実現し動物脳の MRI 画像を得た。さらに中心磁場 3 T も達成した。同じく、水野 ( 鉄道総研 ) らは、 5 T 発生可能な単段冷凍機冷却によるイットリウム系高温超電導磁石について報告した。イットリウム系線材をシアノアクリレート樹脂で含浸して小型のダブルパンケーキコイルを製作し、これを 10 個積層して単段 GM 冷凍機で伝導冷却する輻射シールドなしのクライオスタットに収納して 45 K において実機並の 5.2 T の中心磁場を達成した。
　「 Y 系コイル」では、宮﨑 ( 東芝 ) らは、冷凍機停止後も動作可能な輻射シールドレス Y 系伝導冷却マグネットの開発について報告した。冷凍機停止後も一定時間運転可能なマグネットを開発しており、コイルとコイルケースの間に断熱材を挿入してコイルと冷凍機間の熱抵抗を大きくすることにより、冷凍機停止後も 3000 秒間運転可能であることを解析と実験から確認した。同じく、大保 ( フジクラ ) らは、 20 cm 室温ボア 5 T RE 系高温超電導マグネットの開発について報告した。コイル保護の観点からマグネット仕様に応じて線材の安定化銅層厚さを決定するプロセスから着手し、 7200 m の RE 系線材を使用して内径 260 mm のパンケーキコイルを 24 個積層し、 GM 冷凍機で 23.7 K まで冷却して中心磁場 5 T を達成した。
　「磁気分離」では、西嶋 ( 阪大 ) らは、磁気分離法を用いた放射性物質の土壌からの除去に関する研究について報告した。放射性セシウムが土壌中の粘土鉱物に対して高い吸着率を示すことに着目し、更にセシウムをイオン化させて強磁性吸着剤に吸着させた後に、超電導磁気分離システムで効率的に分離して土壌除染するシステムの可能性を明らかにした。
　「医療応用」では、山本 ( 三菱電機 ) らは、超長期連続運転永久電流 MRI マグネットについて報告した。 1988 年 1 月より現在に至るまで一切励磁消磁を行わずに永久電流モードで運用を続けているヘリウム浸漬 LTS の 0.5 T MRI 用マグネットの磁界減衰率を算定したところ 0.0006 ppm/h となり、仕様の 100 倍以上良好な性能であることを 24 年以上の時間をかけて確認することができた。
　なお、 HTS 機器の実用開発進捗の一方で、安定性、クエンチ検知、保護といった議論も各分野で活発化している印象を受けた。( 鉄道総研　小方正文 )

【 Y 系線材】

　Y 系線材の作製に関しては、 PLD 法や MOD 法などによる超電導層の作製、基板や中間層の作製、多芯線材への加工などのテーマに対して多数の発表が寄せられた。本稿では、その中のいくつかの発表を報告する。
　九工大の松本らは、 PLD 法 Y123 薄膜への BaSnO 3 (BSO) ナノロッド及び Y 2 O 3 ナノ粒子のダブルドーピングの結果を報告した。 BSO ナノロッドに加えて Y 2 O 3 ナノ粒子を導入することでピンニング力が大きく向上すること、 J c の印加磁場角度依存性が 2%BSO + Y 2 O 3 添加では等方的な一方、 4%BSO + Y 2 O 3 添加では異方的となることを示した。
　高知工科大の春田らは、 PLD 法を用いて BaNb 2 O 6 (BNO) を 5-7.5 at.% 添加した RE123 二軸配向膜を作製し、ナノロッドの形態が成膜温度に依存することを報告した。高温成膜では真っ直ぐ膜を貫くようなナノロッドが、低温成膜では短く曲がったナノロッドがそれぞれ導入され、それに伴うナノロッドの形態と空間的な J c 分布の関係を明らかにした。
　昭和電線の広長らは、 TFA-MOD 法による Y123 線材の開発状況を報告した。 Cu 塩のナフテン酸からオクチル酸への変更により焼成後の組織が緻密化した。また、塗布ダイスの導入により線材幅方向の膜厚分布が ±10% 以下に抑制され、溶液温度の保持により線材の長さ方向の膜厚が均一化された。これらにより、 400 A/cm 級の I c を有する長尺線材の製造が可能になったことを報告した。
　東大の元木らは、フッ素フリー (FF)-MOD 法により Cu-rich 溶液を用いて作製した Y123 薄膜の磁場中の J c 特性を報告した。低温・低酸素分圧下での焼成により不可逆磁場の向上が見られ、未同定相のピンニング力向上への寄与が XRD により示唆された。 FF-MOD 法ではピンニング力改善のための結晶内欠陥の欠如が課題であり、磁場中 J c の改善指針が得られたことは大きな成果である。同じく東大の石渡らは、 FF-MOD 法 RE123 薄膜において RE 混合及び Hf 添加によりピンニング力の向上を試みた。 YDy123 膜および Hf 添加膜のいずれにおいても第 1 層を純粋な Y123 とした場合に c 軸配向度が大きく改善し、 Hf 添加により 77 K において 1 T までの低磁場で J c 向上が見られた。いずれにおいても FF-MOD 法特有の高速な結晶成長は維持されており、短時間焼成が適用可能であることが示された。
　 ISTEC-SRL の宮田らは、 IR レーザーアシスト CVD 法による Y123 厚膜の作製を報告した。この手法は、従来の CVD 法による結晶成長と膜表面への IR レーザーの同時照射により高速成膜と高 J c を両立させる新規プロセスである。 IR レーザー照射エネルギーが一定の場合には 2 層目以降においてa軸配向粒が増加するとともに成長過程での試料からの放射輝度が減少したため、 2 層目以降の IR レーザーエネルギーを増加させたところ c 軸配向の促進と J c 向上に成功した。この手法は 200 m m/h 以上の高速成膜が可能である有望な手法であり、今後のさらなる進展を期待したい。
　兵庫県立大の岡井ら及び京大の成田らは、 YBCO テープ線材の低コスト化を目的に、 2 軸配向圧延 Fe 金属基板の作製及び、配向 Fe 金属基板上への 2 軸配向中間層作製の試みを報告した。 YSZ 中間層を厚く成膜するほど表面 X 線回折の (001) ピークの割合が増加し、膜厚の変化に伴う結晶方位の変化が観察された。
　 ISTEC-SRL の町らは、レーザースクライビングと 2 段階エッチングを用いたマルチフィラメント加工に関して報告した。作製した 5 mm 幅の 10 分割線材の I c 特性は面積減少を除くと加工による劣化は 9% と良好であり、磁気ヒステリシス損失が 1 / 10 以下に低減した。今後、溝幅をさらに狭くすることによって、面積減少による I c の低下を抑制する技術の開発が期待される。 ( 東京大学　石渡悠人 )

【 Bi 系材料】

　BSCCO 超伝導体に関する発表は口頭で 8 件、ポスターで約 3 件ほどであった。
　 HTS 電磁特性セッションにおいては、 NIMS の松本らが RF スパッタ法により作製した Bi, Pb-2223 薄膜の特性に関する報告がなされた。報告の中では、今回新しく Bi2212 と CaCuPbO の多層前駆体膜からの薄膜作製に試み、成功したと述べていた。得られた薄膜の T c は 104.5 K まで向上したが組織に不均一な領域が多いため、アニール処理の最適化による臨界電流特性の改善が見込まれる。九州大の梶原らは同じく RF スパッタ法により作製した Bi, Pb-2223 薄膜について、熱処理時間や熱処理温度が微細組織や構成相に与える影響を SEM や HAADF-STEM 観察により明らかにした。焼鈍温度が 848 ℃以上ではよく配向した液相反応領域が増え、 848 ～ 866 ℃の範囲では Bi2223/Bi2212 の面積分率と J c に相関があると結論づけた。東京大の田島らは、 Bi(Pb)2223 多芯線材に対する低酸素分圧下焼成の有効性とともに、加圧雰囲気下での 1 次焼成が線材の微細組織に与える効果を報告した。臨界電流特性は P O2 = 0.02 気圧において 1 次焼成された試料で最も優れ、さらに加圧雰囲気下では配向改善と不純物粒子の微細化が起こると述べた。
　その他のセッションにおいては、前川製作所の大野らが東京電力旭変電所における高温超伝導ケーブル実証試験の中での冷却システム試験結果について報告した。ケーブル系統は 60 時間で 77 K まで冷却でき、 20 日間の冷却では誤差 ± 1 K の範囲で温度を制御できたと伝えた。また、冷却状態で測定した I c も予測通りであり、 10 月 29 日からの実証試験についても安定して問題なく稼働していると報告した。産総研の山崎らは Bi2212 エピタキシャル薄膜の J c の磁場依存性を輸送法により測定し、ピンニング特性に関する考察を行った。低温での高い J c から粒間の弱結合は存在せず、 40 K 以上における高磁場下での J c の振る舞いは磁束クリープ効果が大きいことによる、と報告した。また、 J c の温度依存性は F-MOD 法 YBCO 薄膜同様に線状ピンが主要ピンであることを示唆した。　 ( 東京大学　田島諒介 )

【 MgB 2 】

　本学会での MgB 2 関連のセッションは 4 つにわかれており、また回転機のセッションでの発表も見られた。発表は 15 件 ( 口頭発表 9 件、ポスター発表 6 件 ) あり、多くが線材や大型バルクに関する研究報告であった。
　日大の前田らは、リンゴ酸添加、および無添加の MgB 2 線材に対し、 MgO の低減を目的として Ar/H 2 気流中で熱処理を行った。 T c に大きな変化はないものの、 H 2 濃度の増加とともに J c 特性が劣化することを示した。粗大化した 30~50 nm 程度の MgO により、電流パスが阻害されたことを報告した。京大の常松らは、 Al およびジュラルミンテープ上に、電子ビーム蒸着法により MgB 2 薄膜を作製し、テープ基板温度とその超伝導特性について示した。テープ基板温度の増加にともない T c ~34 K まで改善し、 J c 特性が 1.1 MA/cm 2 (20 K, 1.5 T) 記録したことを報告した。九大の東川らは、磁気顕微鏡を用いて MgB 2 多芯線材のフィラメント内の局所電流分布を評価した。この方法により解析した局所的な最小 Ic の温度、および磁場依存性が四端子法による測定結果と良く一致することを示し、電流制限因子解明に向けた有用な評価法であること示した。東大の伊藤らは、 MgB 4 を前駆体とした in-situ 法 MgB 2 バルクの微細組織と臨界電流特性について報告した。 MgB 4 を用いる手法が高密度化に有望であることを示し、高純度化によりさらなる J c 特性改善が期待できることを報告した。大型バルクについては、鉄道総研の富田らは、 40 mm f の MgB 2 バルクにおいて 13.5 K で 3.5 T の捕捉磁場を記録したことおよび均一な捕捉磁場分布を示したことを報告した。石原らは MgB 2 バルクの作製条件の最適化について報告した。 750 ℃以上の熱処理で作製したバルクは 15 K で 1.5 T 以上の高い捕捉磁場を記録したことや同様の温度依存性を示すこと明らかにした。また、 850°C で熱処理したバルクが 15 K で 1.82 T の高い磁場を捕捉したことを報告した。東大の山本らは、 MgB 2 バルクの磁束クリープについて報告した。 20 K における FC 着磁により、 2.8 T の捕捉磁場を有するバルクの 3 日後の磁束減少が 2% 以下であることを示した。岩手大からは 3 件の報告があった。佐々木らは、 HIP 法で MgB 2 バルクを作製することにより、バルクの高密度化に成功し、従来のカプセル法と比較して J c 、および捕捉磁場が大きく向上したことを報告した。田村らは、 MgB 2 バルクのパルス着磁の結果について報告した。 Mg-RLI 法により作製した MgB 2 バルクには、比熱向上を目的に W をドープしたバルクのパルス着磁の結果を報告した。カプセル法で作製したバルクについては均一な捕捉磁場分布を示した一方で、 Mg-RLI 法により作製したバルクについては、不均一性やドープにより特性が劣化したことを報告した。小山らは、パルス着磁した MgB 2 バルクに対し、シミュレーションによるバルク体内の磁束運動と温度変化について報告した。実測値とシミュレーションの捕捉磁場が、比較的近い振る舞いを示し、今後比熱や熱伝導率の温度依存性を考慮することにより、より精密な解析が行える可能性があることを報告した。 NIMS の藤井らは、 ex-situ 法 PIT テープ線材における充填粉末の精製が臨界電流特性に及ぼす影響を報告した。 10% の Mg 添加を行い、炭素置換により余剰になったホウ素の組成のずれを解消させることで粒間結合、および J c が改善したことを示したことを報告した。 NIMS の葉らは、内部 Mg 拡散法 MgB 2 線材の中心部における Mg ロッドとは別に、ホウ素部分に Mg 粉末を添加した効果を示した。 Mg を 15 mol% 添加した場合、 MgB 2 層内の空隙の増大により J c は低下するものの、 Mg を添加することにより Mg ロッドを小さくできるため、 J e が改善したことを報告した。日大の兼田らは、 CHPD 法による MgB 2 線材の作製について報告した。 CHPD 法 MgB 2 線材の原料 Mg 粉末の平均粒径が J c に及ぼす影響を示した。 CHPD 法前では、 Mg の粒径が小さいほど高い J c 特性を記録したことを示した。 CHPD 法後ではいずれの試料における J c は大きな改善を示した一方で、いずれの試料も同程度の J c 特性であることを報告した。富山大の川本らは、高体積率 MgB 2 /Al-1.0 mass%Mg 2 Si 複合材料の時効挙動と超伝導特性について報告した。三次元溶湯浸透により複合材料ビレット (MgB 2 50 vol%) を作製後、押し出し加工を施した試料について、 MgB 2 が微細に分散した組織がみられ、 MgB 2 を含まない試料と比較して硬さに向上がみられ、 T c も 38 K 示したことを報告した。同学会中に行われた MgB 2 の調査研究会においては、日立の田中らが MgB 2 線材の開発について報告をした。均一かつ高い超伝導特性を有する MgB 2 長尺線材の作製が可能であることを報告した。( 東京大学　伊藤明植 )

【 HTS バルク】

　HTS バルクのセッションでは口頭で 1 件、ポスターで 6 件の発表があった。
　口頭発表で、東大の瀬戸山らは RE123 溶融凝固バルク体を作製する際に、 RE 元素を混合する手法を提案した。二種類の RE 元素を混合する際に原料化合物の組合せを工夫することで RE211 相粒子が微細化し J c 特性が改善することを報告した。
　ポスター発表で、一関高専の村上らは放電プラズマ焼結により得られた前駆体を結晶成長させることで Dy-Ba-Cu-O バルクを作製し、従来のバルクと比較してボイドが減少したことを報告した。芝浦工大の川人らは BaSnO 3 の添加によって Y-Ba-Cu-O バルクの捕捉磁場値が増大することを示し、その原因が BaSnO 3 添加によって Y211 が微細化したことに加えてより微細な Y 2 Ba 4 CuSnO x が生成して磁束ピン中心として働いたことにあることを明らかにした。同大学の大谷らはさまざまな条件で形状記憶合金リング補強した Gd-Ba-Cu-O バルクの捕捉磁場を測定した結果、溶体化処理を施すことでリングの形状回復率が向上し最大捕捉磁場も高くなることを明らかにし、その原因をリングの圧縮予荷重によりひずみの緩和が J c の低下を抑制したためとした。東大の岡島らは 140 mmφ の Gd-Ba-Cu-O バルクの液体窒素温度における捕捉磁場分布を測定し、逆問題を解くことでバルク内の電流密度分布を推定したことを報告した。さらに得られた電流密度を用いた FEM 解析からバルク内部の磁場分布を求めた結果、バルク内の J c は 10 8 A/m 2 程度であり J c の磁場依存性にピーク効果を見出したことを述べていた。
　バルクセッション以外でも数件、バルクを用いた研究についての発表があった。とりわけ会の注目を集めたのは、理研の仲村による「バルク超電導体を用いた小型無冷媒磁石の NMR/MRI 応用」についての論文賞受賞記念講演である。 NMR/MRI 用超伝導磁石にリング状 Eu-Ba-Cu-O バルク体を採用し、静磁場着磁法 (FC) により着磁した結果、高い磁場均一度が確認されたことを報告した。材料分野での使用できる高分解能 NMR/MRI の実現に向け応用できるとのことである。 ( 東京大学　瀬戸山結衣 )