SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.21, No.6 December, 2012



               
国内初、 Bi 系高温超電導ケーブルの実系統連系始まる         _東京電力、住友電工、前川製作所_


(1)高温超電導ケーブル実証プロジェクト

 高温超電導ケーブル実証プロジェクトは、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) の委託事業として、平成 19 年から東京電力(株)・住友電気工業(株)・(株)前川製作所の 3 者が受託し、 Bi 系高温超電導ケーブル(以下、超電導ケーブル)システムの開発(ケーブル:端末部・中間接続部,冷却システム、監視装置等)、日本で最初の実系統による長期課通電試験を実施する。この長期課通電試験を通して、超電導ケーブルシステムの運転・保守・メンテナンス等のトータルシステムとしての性能評価をするとともに、信頼性・安定性を評価することを目的としている。

 

(2)超電導ケーブルシステムの設置

超電導ケーブルは、東京電力(株)旭変電所構内にある変圧器( 154 kV/66 kV , 200 MVA )の 2 次側に布設する。超電導ケーブルは、長さ約 240 m の 3 心一括型構造であり、中間接続部・終端接続部を有し、系統事故による事故電流( 31.5 kA , 2s )に耐え得る構造である。超電導ケーブルシステムの設置工事は、平成 22 年に計測室・冷却システム室・現場事務所・冷却システム、平成 23 年に超電導ケーブルの布設・組み立てを実施した(図 1, 写真 1~3 参照)。また平成 23 年に冷却システムの単体試験による性能評価、平成 24 年に超電導ケーブルの単体試験・性能評価および冷却システムと超電導ケーブルの総合試験・評価を行い、実系統に連系することができる性能を有していることを確認した。

 

図 1  超電導ケーブルシステム配置図

 

 

写真 1  超電導ケーブル端末部

 


写真 2  超電導ケーブル曲がり部(上) 中間接続部(下)

 

 

写真 3  冷却システム

 



(3)超電導ケーブル実系統連系

 平成 24 年 10 月 29 日 13 時 30 分より、超電導ケーブルシステムの完成を記念した記者会見が行われ、 25 社( 30 名)の報道関係者が取材に訪れた。その後、 15 時より本プロジェクト関係者が出席し、超電導ケーブルシステムの実系統連系開始のセレモニーおよびテープカットが実施(写真 4 )された。続いて、超電導ケーブルを実系統に接続するため、東京電力(株)神奈川給電所にて遠方操作を行い、 15 時 33 分日本で始めて超電導ケーブルが実系統に連系され、超電導ケーブルによる電力供給が開始された(写真 5 )。当日の様子は、当日 18 時 10 分からの NHK 首都圏ネットワークや翌日の各紙にて紹介された。

                              写真 4  テープカットの様子            写真 5  実系統連系操作手順説明の様子

 

 

 運転開始後の超電導ケーブルでは、電圧は一定に維持され、電流は負荷変動に応じて増減を繰り返し(図 2 )、現在のところ最大電流は、 1000 A 程度である。また液体窒素温度は、ケーブルへの供給温度 69±1 K を維持するよう冷却システムによる制御運転が安定的に行われている(図 3 )。
  なお、超電導ケーブルの電流・電圧値等の変動は、住友電工社のホームページ ( 高温超電導ケーブル実証プロジェクト: http://www.sei.co.jp/super/cable/jissho.html) にて確認することができる。図 4 は 12 月 19 日の記録である。  ( カクトラノオ )

 

図 2  超電導ケーブルの電流値・電圧値

 

 

図 3  液体窒素の温度変化と流量

 

図 4 2012 年 12 月 19 日の運転状況