SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.21, No.5 October, 2012


≪会議報告≫

Applied Superconductivity Conference 2012

(2012/10/08〜10/14 @Oregon Convention Center, Portland

2G 線材 応用】

  2G 線材 応用は幅広く多数のセッションで発表がされたが、比較的小型マグネット関連の発表について、筆者の聴講したものから以下に報告する。
  2G 線材はコイル化の際、エポキシ含浸を施すと冷却時の熱応力で線材内で剥離応力が働きコイル劣化する可能性があることが指摘されているものの、本学会ではコイル化手法を工夫・選定することによってコイル劣化を抑止する動きが見られ、一部では km オーダーのマグネット開発の報告例もあった。
  理研・千葉大などの研究グループが 2G 線材にポリイミド電着技術を適用することで劣化のないエポキシ含浸コイル化技術について報告し、外径 73 mm のコイルを 4.2 K で通電し磁場 1.45 T 、電流密度 529 A/mm 2 の高電流密度のコイル性能を示した。鉄道総研の K. Mizuno らは、含浸材としてシアノアクリレートを適用し、パラフィン含浸コイルと組合せ、 Super Power 社製 2G 線材 約 98 m/ 層を用いてパンケーキコイルを試作し、 10 層積層したマグネットで伝導冷却 45 K で中心磁場 5.2 T 、 40 K で中心磁場 6.0 T を達成したとの報告がされていた。
  産総研の M. Furuse らのグループからは、 XMCD 測定システム用の 2 軸の vector magnet 開発に関する報告があった。 2G 線材を約 800 m 使用し、パラフィン含浸により 7 パンケーキコイル / ユニットを製作、 4 ユニットを Cone-shaped ユニットコイル形状で 2 軸に配置することによってコンパクト化を実現し、伝導冷却 30 K で中心磁場 1 T 以上に到達。中心磁場ドリフトも 0.4 %以下と小さいとの報告であった。
  Industrial Research Ltd. ( ニュージーランド ) グループの B. Parkinson らは 150 mm f 室温ボア 1.5 T 四肢用 MRI マグネット開発に関する報告があった。 AMSC 社製 2G 線材合計約 4.8 km を使用して、 16 ダブルパンケーキコイルを 5 つのグループに分けて外側の鉄ヨークと共に配置、最適化を行い、パルスチューブ冷凍機による伝導冷却下 20 K で中心磁場 1.5 T 、さらに SIM コイルを使って磁場均一性 20 ppm 以下を実現したとの報告があった。
  また、 SuNAM (韓国)の D. Kim らのグループからは室温ボア 100 mm f 、 3 T のマグネット開発に関する報告があった。 SuNAM 製 2G 線材、約 2.5 km を使用し、線間絶縁なしのパラフィン含浸で内径 140 mm 、外径 182 mm のダブルパンケーキコイルを 22 個試作、 GM 冷凍機による伝導冷却下 20 K 、 141.6 A 通電で中心磁場 3.0 T を達成し、 10 mmDSV の磁場均一性は径方向 0.027%, 垂直方向 0.047% であったとの報告があった。
  さらに、フジクラの M. Daibo らからは 200 mm f 室温ボアの 5 T マグネット開発に関する報告がなされた。フジクラ製 2G 線材約 7.2 km を使って内径 260 mm 、 24 個のパンケーキコイルを試作し、液体窒素中での健全性確認後、クライオスタットに取り付け、 GM 冷凍機を使って伝導冷却下 24 K で中心磁場 5.0 T の励磁に成功、 60 分間の安定動作を確認したとのことであった。
  徐々にマグネット開発が進んできている印象であるが、その一方、テープ形状による遮蔽電流による磁場への影響に対する懸念も指摘されていた。 NHMFL のグループからは高磁場マグネットへの適用の観点から 2G 線材の遮蔽電流の影響の解析、評価ツール開発に関する報告がなされていた。しかし、京都大学のグループでは遮蔽電流による磁場への影響を評価するためダイポールマグネットを用いて多極磁場成分を評価し、 8 時間励磁での磁場ドリフトは 10 -4 オーダーで計算値と一致し、実現に向けた影響は小さいとの報告がなされていた。
  この他、まだまだ多数の報告があったが、 2G 線材で指摘されていた課題をコイル化の工夫で克服・解決し、徐々に大型化に向けたマグネット開発例の報告が出てきた。今後のさらなる進展に期待したい。( フジクラ 大保 雅載 )

 

MgB 2

 本学会での MgB 2 関連の発表は 8 セッションにわたり、約 60 件の発表があった。多くが線材に関する研究報告であり、線材自体の特性の向上を試みた研究や、各アプリケーションに向け、原料粉末の調整をはじめとした線材加工に関する研究が多くみられた。バルクに関していえば、グラフェンをはじめとした炭素源、 ZrB 2 , TiB 2 , Dy 2 O 3 などといった化合物のドープがみられた。また、ボールミルや MgO を取り除く取り組みなど、原料粉末の調整に関する研究が盛んであった。 HTS バルクのセッションにおいては、 RE 系だけでなく MgB 2 バルクの報告が多くなってきた。薄膜関連ではキャビティーや人工ピンの導入に向けた報告が行われた。
  Columbus の S. Brisigotti らは ex-situ 法 MgB 2 テープ線材における構造から安定性、原料粉末の粒径の制御について報告した。 EDISON 社の G. Giunchi らは、 Reactive Mg-Liquid Infiltration(Mg-RLI) 法を長尺線材に適用し、 J e ~ 730 A/mm 2 (3 T, 4.2 K) を記録したことを報告し、 Geneva 大の M. Kulich らは、 ex-situ 法線材に冷間静水圧プレスを施し、 2 GPa 加圧することでコネクティビティ ( 有効通電経路率 ) が 21% から 31% まで改善したことを示した。 Hyper Tech 社の M. Rindfleisch らは、シース材にはじまり、フィラメント数、形状に至るまでさまざまな線材のデザインおよび臨界電流特性を報告した。 HITACHI は企業展示にて、 MgB 2 線材の最新の開発状況について作製方法から臨界電流特性に至るまでポスターにより紹介していた。ブースでは実際に 300m 級の線材を展示し、均質で特性の良い線材が作製可能であることも紹介していた。 IFW-Dresden の W. Hassler らは in-situ, ex-situ 法線材の両原料に対するボールミル処理が、線材内の MgB 2 の歪みや臨界電流特性に及ぼす効果を示した。加えて、各製法におけるボールミル条件の違いが及ぼす影響やメカニカルミリングについても報告していた。 NIMS の熊倉らは、 PIT 線材および Mg 拡散法線材に対するリンゴ酸添加の効果と、トリフェニルアミン添加の効果を微細組織および臨界電流特性から評価した。東大の山本、鉄道総研の富田らは、 in-situ 法において均一な捕捉磁場特性を有するバルク磁石を紹介し、 3.5 T の捕捉磁場を記録したことを報告した。 Cambridge 大の J. H. Durrell らは、 HIP 処理を適用した ex-situ 法バルク磁石を作製し、 3.1 T の捕捉磁場を記録したことを報告した。また、岩手大の藤代らは、先の 2 件の報告とは異なり、バルク磁石に対しパルス着磁をした際に起こる事象を、シミュレーションと実験を交えて、捕捉磁場プロファイルなどさまざまなパラメータを詳細に報告した。九大の波多らは、 Mg 2 Cu を添加し、共晶温度を利用して低温熱処理で作製した in-situ 法 MgB 2 線材の詳細な微細組織観察を行い、熱処理中における Mg 2 Cu の挙動の考察結果を報告した。嶋田らは、 TEM などの詳細な微細組織観察から、 Al 基板上に作製した薄膜の臨界電流特性に影響を与える因子について検討し、報告した。東大の山本らは、 ex-situ 法における自己焼結の効果をバルク試料で示し、さらに ex-situ 法線材における自己焼結の効果も報告した。 Cambridge 大の M. Wozniak らは MRI の永久電流モードのための超伝導接続について紹介し、未熱処理の一本の線材を一回り大きなシースに挿入し、挿入した線材の端部に Cu を添加した Mg と B の混合粉末を充填し、さらにもう一本の線材を入れてこの線材と合わせて二本の線材で混合粉末を挟み込む形にして熱処理することで超伝導接続を試みた結果を報告した。 NIMS の藤井らは、 Mg 添加をした ex-situ 法線材の高特性化を報告した。 MgB 2 と Mg をミネラルオイル中でボールミルすることにより、粒径の微細化、酸化膜の除去、 B サイトへの炭素置換が起き、 J c ~ 9 kA/cm 2 (10 T, 4.2 K) を記録したことを示した。東大の伊藤らは、 in-situ 法において B の代わりに MgB 4 を用いることで、常圧下での高密度化に成功し、従来の in-situ 法に比べ比較的高い臨界電流特性が実現したことを報告した。 ( 東京大学 伊藤 明植 )

 

RE123 線材

  RE123 線材の作製に関しては、 PLD 法、 TFA-MOD 法によるものが多数発表された。また、原料塩に TFA を用いないフッ素フリー MOD 法や中間層など、作製コストの低減に関心を向けたものも多く発表された。ここでは、それらの中から注目した発表を紹介する。
  まず、 PLD 法では、 IFW Dresden の Sparing らは、 PLD 法による Y123 薄膜の堆積とスパッタリングによる HfO 2 の蒸着を交互に繰り返すことにより、 Y123 膜中への直径 ~ 9 nm の HfO 2 ナノ粒子の導入に成功し、全磁場方位に対して J c が向上したことを報告した。この手法は、スパッタリングの雰囲気や PLD のパルス回数によってナノ粒子の粒子径や粒子数密度の独立制御が可能、 TFA-MOD 法などに比べ粒子径が一定、などの長所を有しており、ナノ粒子のピンニング特性を明らかにする上で有利である。上海交通大の Li らは、 Ni-W テープ上に Y123 膜を堆積する際、 Y の一部を他の RE 元素 (Gd, Sm, Ho, Nd) により置換することで、超伝導特性や表面組織が改善することを報告した。九工大の Matsushita らは、 BaHfO 3 ナノロッドのドープ量を変えた Gd123 薄膜線材について、 3.5 mol% ドープで最も良い特性を示すことが報告された。ドープ量を増やす際の T c 及び percolation probability の改善が課題であるとの指摘もされた。
  TFA-MOD 法では、まず ISTEC の Nakaoka らが、原料溶液の組成が超伝導特性に与える影響を主に断面観察結果より報告した。定比組成の場合には膜中の未反応の BaF 2 が原因となって大きな BaCuO 2 や Y 2 O 3 が生じ、 Ba 不足組成の場合に比べ低い I c を示す原因となることを指摘した。 ICMAB-CSIC の Obradors らは、低 P total 及び高 P H 2 O の調整により均一な核生成が促進されるとともに、 Ag 添加により結晶成長速度が増大し、空隙が減少して超伝導特性が改善すると報告した。一方で東芝の Araki らは、膜表面の平滑化の観点からは低 P H 2 O が好ましいことを熱力学的に主張し、それを支持する実験結果を発表した。 TFA-MOD 法における雰囲気については、依然として今後も議論すべきテーマであろう。
  最後に、フッ素フリー MOD 法の発表を報告する。九大の Mukaida らは、焼成時の全圧を 400 mTorr まで下げることで焼成温度を 730 ° C まで下げることに成功した。フッ素フリー MOD 法の従来の焼成温度である 800 ° C 付近では、 RABiTS 法により作製した金属テープの CeO 2 層との反応が問題となるため、この低圧下での焼成は薄膜線材の作製に有望な手法である。東大の Ishiwata らは、 1 層目への Y123 層の導入が c 軸配向膜の作製に極めて有効であることを示した。また、ピンニングセンターの導入を試み、 1 mol% までの微量 Ga 添加が低温・高磁場下における J c を、 BaHfO 3 析出物の導入が 77 K ・低磁場下における J c を向上させることを報告した。 Hf 添加量は 1 mol% とまだ少なく、添加量の増加による効果が期待される。 ( 東京大学 石渡 悠人 )

 

Bi 系】

 BSCCO 超伝導体セッションの発表は口頭で 15 件、ポスターで約 14 件ほどであった。また、その他の Bi 系超伝導体の応用に関する発表も 50 件近くあった。
  RIAS の長村らは DI-BSCCO R に補強材をラミネートした Type HT の機械強度を上げる手法として、ラミネート時に補強材へ予め強い張力をかける pre-tension を提案した。報告では pre-tension 過程や補強材厚みの違いが機械強度に与える影響を考察し、定式化を行った。
  住友電工社の中島らは、 Type HT の最近の研究開発状況について報告した。 pre-tension と併せて新しい補強材 XX ( 厚み 50 m m) を用いることで 540 MPa を超える臨界応力が得られたことを示した。また、キャリアドープ状態をオーバードープ側とすることで 4.2 K 、 12 T において 570 A の I c が得られ、これから 4,2 K 、 17 T での I c も 550 A 程度になると見積もられることを報告した。英ダラム大の P. Sunwong らは、 DI-BSCCO R 線材について J c - B 特性や B c2 の磁場角度依存性、温度依存性及び引張応力依存性を調べ、それらの定式化を試みていた。フロリダ / 強磁場研の J. Jiang らによる招待講演の中では、 Bi2212 丸線材において溶融過程に生じる酸素気泡に由来する空隙を問題視し、高密度化の手法を報告していた。従来の線引きの代わりにスエージ加工を用いることで 4.2 K での J e 及び I c が 2 倍近くまで向上した。また、 2 GPa での CIP も空隙の減少に有効であると報告した。加えて、 5 気圧以上の HIP 処理が線材の緻密化 ( 縮径 ) や粉末の染み出し防止に効果的であり、これらの手法の組み合わせにより 4.2 K 、 20 T での J c は 2,500 A/mm 2 を達成したと報告した。米ロスアラモス国立研の T. G. Holesinger らは、 Bi2212 丸線材における超伝導電流パスは主に銀シース界面 (shell) 部分に限られると仮定し、電流輸送モデルから界面部分の J c (4 K, 5 T) を 40,000 A/mm 2 と見積もった。 NEXANS の M. O. Rikel らは、 Bi2212 の酸素ドープ量依存性を、組織配向性とカチオン組成の観点から考察した。 Bi2212 丸線材とバルクでは最適ドープ状態は酸素量 (8+ d ~ 8.201) としてほぼ同程度であり、組織配向性による影響はない一方で、カチオン組成の影響は大きく、 Sr/Ca 比が 2.36 と 2.18 とでは 0.01 以上の D d が存在した。フロリダ / 強磁場研の亀谷らは Bi2212 丸線材の粒界における配向性を解析し、線材の高 J c 化にこれ以上の配向は必要ないと結論づけた。米ノースカロライナ州立大の A. Hajvafvala らは Ag-Mg 合金よりも Ag-Al 2 O 3 合金のほうが機械強度や伸線加工のし易さで優れることを示し、実際に Ag-0.5 wt%Al 2 O 3 合金を嵌合パイプとして用いて作製した Bi2212 線材では機械強度の改善や 50 % の I c 改善効果が得られたことを報告した。同じく米ノースカロライナ州立大の G. Naderi や X Liu らからは Bi2212 丸線の焼成過程を複数の回に分ける Split Melt Process の効果についての報告があった。冷却過程で生じる Bi2201 が次の焼成における Bi2212 生成の核になって単相化が進むと共に異相の生成を抑制し、各焼成の徐冷速度や保持温度などの組み合わせ最適化を図ることで 4.2 K, 5 T の J c で 40% の向上効果が認められるとしていた。
  ポスター発表では、中 Innova Superconductor Technology 社の R. Bao らが、窒化物及び窒酸化物を出発物としたスプレー法により得たプリカーサ粉末から作製した Bi2223/Ag テープ線材において、 77 K 、自己磁場下で 150 A の I c を記録したことを報告した。東京大学の田島らは、 Bi2223 バルク及び DI-BSCCO R に対して低酸素分圧下焼成と HIP 処理を組み合わせることにより、粒径・鉛ドープ量が従来条件と比べ変化し J c 、 I c が向上したと報告した。 ( 東京大学 田島 諒介、住友電工 中島 隆芳 )

 

【鉄系】

  10 日朝のプレナリーセッションでは、東工大の細野教授が 2008~2012 年までの鉄系超伝導体の研究動向についての講演を行った。特に最近の興味として、 2 つの超伝導ドームを持つ LaFeAsO 1- x H x と Co ドープの Ba122 の粒界特性が大きく取り上げられていた。
  全体としては 122 系薄膜に関する発表が多く見られた。カールスルーエ大学の Rehm らは電子ビームリソグラフィーとイオンミリングを用いて Ba122 薄膜を作製し、 4.2 K で 1 MA/cm 2 という高い J c を示すことを報告した。ジェノバ大学の Putti らのグループは、 Fe(Se,Te) において不均質性がグローバルな J c の向上に寄与することを報告し、 15 日間の低温アニールを施すことによってゼロ磁場で 10 3 A/cm 2 に J c が達することを発表した。名古屋大の Ichino らは LaAlO 3 (100) 基板上にエピタキシャル成長させた Fe(Te,S) 薄膜を作製し J c が 4 K で ~10 4 A/cm 2 に達することを報告した。一方、 Ferdeghini(CNR-SPIN, Genova Italy) らは Fe(Se,Te) 薄膜が 4 K で J c が ~10 5 A/cm 2 に達することを報告し、高磁場下であってもボルテックス同士の相互作用より、ピニングセンターの相互作用の方が支配的であると発表した。 Fe(Te,Se) 薄膜において中間層がエピタキシャル成長を阻害するという問題があるが、 IFW Dresden のグループは Fe バッファー層を導入することで高い T c = 19 K を持つ薄膜を作製したことを報告した。線材に関しては、フロリダ州立大学の Weiss らは K ドープ Ba122 の丸線で、従来の鉄ニクタイド線材やバルクで得られる 5 倍以上となる 0.12 MA/cm 2 以上の通電 J c を記録したことを報告した (4.2 K, 自己磁場下 ) 。この成果はメカニカルアロイングで 122 相を生成させ、これを原料として線材加工後 600°C という低温で焼成することによって粒界に生じやすい液相の生成を抑えたことによるものである。磁気光学像でも従来の高温焼成試料ではほとんど観察できなかったグローバルな J c を反映したルーフトップパターンが 600°C 焼成試料では明瞭に観察されていた。 Chinese Academy of Sciences の Ma らグループは PIT(Powder-in-Tube) Sr(K)122 線材で多様な方法で通電特性の改善を図っているが、今回は Ag 、 Pb 、 Sn のドープ効果について報告した。なかでも Sn ドープが J c の改善に大きな効果を示し、平板状の結晶が線材の長手方向に伸びた微細組織の形成と J c 特性の関係が議論された。東大の Tamegai らは磁気光学像から粒内、粒間 J c を評価し、 PIT 法で作製した (Ba,K)Fe 2 As 2 線材と拡散法で作製した FeSe 線材の粒間 J c をそれぞれ 4.2 K 自己磁場下 1.3 x 10 4 A/cm 2 、 600 A/cm 2 と報告した。また、 Los Alamos 国立研究所の Maiorov らは、様々な 122 系の鉄砒化物超伝導体にプロトン照射を行い、点欠陥の導入効果を報告した。東大の Shimoyama ら、 ISTEC の Chikumoto らは 122 単結晶のピンニング特性を報告し、前者は Ba(K)122 において K 過剰ドープが劇的なピンニング力の低下を招くこと、後者は Ba122 におけるドープ種によるピンニング特性の違いを議論した。残念ながら 122 相は異方性が小さいものの磁化緩和は全ての物質で銅酸化物超伝導体同様に速いようである。このほか東大の Singh らは F ドープ Sm1111 焼結体について、 900°C という従来より 200°C 以上低い焼成温度において最も良好な特性を示すことを明らかにした。 ( 東京大学 尾崎 智也 )