SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.21, No2 April, 2012


 

日本初の実系統高温超電導ケーブル試験、液体窒素注入、今秋接続へ

 


 スーパーコム事務局は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託により進められている「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」 ( 東京電力−住友電工−前川製作所 ) に関する取材記事を 2010 年 4 月号 (Vol. 19, No.2 :住友電工熊取試験所における 30 m ケーブル事前検証試験 ) 、同年 8 月号 (Vol. 19, No.4 :旭変電所初取材 ) 、同年 10 月号 (Vol. 19, No.5 :前川製作所における冷却システム検証試験 ) 、 2011 年 8 月号 (Vol. 20, No 3 :旭変電所でのケーブル布設状況 ) に掲載してきた。そしてこの 4 月 16 日に再び東京電力、住友電工、前川製作所のご協力によって現地を取材することができたので、以下に現況を紹介する。
 このプロジェクトのケーブルは全長約 230 m の 3 心一括型で定格容量は 200 MVA (66 kVrms, 1.75 kArms) である。 構成は表面に防食層を持つ断熱管内に 3 本のケーブルコアが収められたもので、超電導線材には住友電工社製の DI-BSCCOR (Bi2223 線材 ) が用いられている。 図 1 にこの実証試験用地内の配置図を再掲したが、ケーブルの途中には接続部があり、また地中に埋設された部分もあることがわかる。

図 1  実証試験用地内の配置予定図 ( 東京電力提供 , SUPERCOM2010 年 8 月号の再掲 )

 

 

 

図 2  最近の実証試験用地内の様子。左:中央に中間接続部が見える。草の生えた部分の地下にもほぼ平行にケーブルが埋設されている。右:中央奥が端末部、左が計測室、右は現場事務所である。

 

 前回は管路へのケーブル布設が終わり、中間接続部における超電導−超電導接続作業や終端接続部における超電導−常電導接続の作業が行われていること、および模擬負荷を用いた冷却システム単体試験が始まっていることを報告した。今回訪れた際には図 2 に示したように、接続作業用のテントも既に片付けられており、本プロジェクトの全貌が顕わになっていた。液体窒素注入によるシステム全体の冷却試験がちょうど始まったところで、注入された約 1 万リットルの液体窒素が冷却システムを通ってサブクール状態で循環していた。計測室ではシステム各所の温度や液体窒素の圧力などが監視されており、ケーブルを通した冷却運転における各種制御パラメターの調整が進められていた。間もなくケーブルの臨界電流測定、課電試験が開始されるとのことである。また、この秋には実系統と接続される予定で、平成 25 年度にわたって長期の実証試験が続けられるとのこと。超伝導 101 年目の国内のメインイベントとして是非、順調に準備が進むことを祈りたい。 (SUPERCOM 事務局取材 )