SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.20, No4, Ocobert, 2011


 

2G 線材、新たな局面へ                 _ SUPERCOM 事務局_

 


 米国では 2G 線材関係の DOE のプロジェクトの打ち切りによって、 2G に関わる研究開発のほとんどが停止し、 2G 線材の大手 2 社である AMSC 、 SuperPower の動向が注目されていたところ、 10 月 17 日に古河電工が SuperPower の買収予定を明らかにした。 SuperPower は世界にさきがけて IBAD 法と MOCVD 法の組合せによる 2G 線材の量産を始め、 Albany 市で行われたケーブルプロジェクトに初めて 2G 線材を供給したほか、比較的低価格で世界各所に線材を販売するなど 2G 線材の普及に努めてきた。
  RABiTS 法基体 ( 配向 Ni-W 合金 ) を用いる AMSC の製品と比べ、フジクラと同様にハステロイ基体を用いている SuperPower の製品は強度に優れ、強磁場発生用の磁石に用いることができるなど、その用途の広さをアピールしてきた。また、 2008 年に 1300 m 長の線材を製造するなど、長尺化技術においても先頭を走っており、他のメーカーの目標となっていた。一方、ユーザーを持ったことによって、 2G 線材の使い勝手が明らかになり、様々な課題が顕かになったが、多くの新規材料がそうであるように、 2G 線材が工業製品に成長していくうえで避けては通れない経験である。
  最近、販売が始められたフジクラの 2G 線材については、臨界電流特性に勝るほかハンドリングの面でも SuperPower の製品よりも優れているという話を国内では良く耳にするようになっている。このような折、長尺 2G 線材の量産化にやや遅れをとっていた古河電工による SuperPower の買収は、 2G 線材の開発競争に一層拍車をかける可能性があり、身勝手なユーザーサイドから見ればこれは頼もしいことである。
  なお、同じく 10 月 17 日には AMSC がホームページにて、新しい会長のもとでの戦略として、風力発電と電力網システムに集約することを明らかにした。

  (http://phx.corporate-ir.net/phoenix.zhtml?c=86422&p=irol-newsArticle_Print&ID=1617580&highlight=)

  超伝導技術は触れられておらず、同社の超伝導分野への意欲ははっきりしない。
  また、翌 10 月 18 日にはこの 5 月末に終了した単年度 NEDO プロジェクトの事後評価が公開で行われた。ここではフジクラと昭和電線ケーブルシステム両社に 1 km 長の 2G 線材製造が可能な装置が導入され、大震災の影響は受けたものの、初期稼働が順調であったことが報告された。よって、近く国産 2G 線材は長さの点でも世界のトップクラスに並ぶことになる。
  1G 線材で世界を圧倒している住友電工、 2G 線材で急成長しているフジクラ、長尺 MOD 法焼成装置を導入した昭和電線、そして強力な生産設備を組み入れた古河電工と、当面、日本が高温超伝導線材のリーダーとなって世界を牽引して行くことは間違いないと思われる。線材作製には多くのノウハウがあり、製品を解体、分析してもその製法を知ることは極めて困難で、コピー技術によって他が追随することは容易でない。高温超伝導応用を支える線材技術の日本企業への集約は、逆に日本が世界の高温超伝導応用の発展の鍵を握ることを意味しており、この大きな期待に応える進展を願わざるを得ない。 (SUPERCOM 事務局補佐員 )