SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.20, No3, August, 2011


 

超電導等を用いた電力貯蔵技術の研究に関する協定を締結  _山梨県、鉄道総研_

 


 東日本大震災以降、再生可能エネルギーを利用した、エネルギー政策の見直しの議論が高まっており、再生可能エネルギーの大量導入が急務となっている。しかし、再生可能エネルギーは日照時間や風速などの自然条件によって発電量が大きく増減することから、より効率的にエネルギーを利用するためには、電力貯蔵装置などにより発生電力を平準化する必要があり大容量の電力貯蔵装置としては、超電導フライホイールや SMES などの新技術の開発が期待されている。
  そこで、山梨県 ( 横内知事 ) と公益財団法人鉄道総合技術研究所 ( 垂水理事長 ) は、相互に連携し、超電導関連技術等を利用した電力貯蔵技術の研究を推進するため、鉄道総合技術研究所が山梨県に技術協力を行うことについて、平成 23 年 6 月 6 日に協定を締結した。
  山梨県では、甲府市の米倉山造成地に、全国トップクラスの日照時間を活かして、内陸部では最大規模となる 10 MW メガソーラ ( 大規模太陽光 ) 発電所を東京電力 ( 株 ) と共同で建設を進めている。この計画は、地球温暖化対策の促進として進めており、県内の二酸化炭素の排出量の削減に貢献するとともに、再生可能エネルギーの普及促進が図られるなど、低炭素社会の実現に向けた先導的な役割を果たすことが期待されている。
  一方、太陽光発電が可能なのは日照時間帯であり、また発電量は天候にも左右され、効率的にエネルギーを利用するためには、発電した電力を貯蔵できる大容量の蓄電技術の開発が重要である。

 鉄道総合技術研究所はこれまで、電力貯蔵技術の一つである超電導フライホイールの研究を進めており、垂水理事長も「鉄道の省エネルギー技術開発の一環として取り組んだフライホイール等を含めた蓄電技術関係の研究成果が蓄積されてきた」と語る。平成 25 年には 30 MJ 級の超電導フライホイール蓄電装置の製作を目指している。また、山梨リニア実験線での技術開発を通して山梨県とも密接な関係があることから、超電導等を用いた電力貯蔵技術の技術協力を行う運びとなった。
  国においては平成 25 年度から新しい電力貯蔵技術に関する実証試験が始まる見通しである。横内知事も記者会見で「実証試験の県内への誘致をし、県内に実証試験の研究拠点を整備していくことを目指したい。同時にまた、この超電導関連技術の情報発信や関連産業の振興にも、連携して取り組んで行きたい。」とコメントしているように、今後、有識者による委員会を設置して研究の推進に向けた基本計画を策定し、この実証試験の山梨県への誘致を目指す考え。山梨県では今後、研究フィールドを整備することにより、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入を促進し、併せて関連産業の振興を図りたい考えであり、鉄道総合技術研究所はこれに対し技術協力を行い、山梨県とともに低炭素社会の実現と県内産業の活性化に取り組んでいくとのことである。 ( 夏休み )

      図 1. 超電導フライホイール ( イメージ )