SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.20, No3, August, 2011


 

世界最高電圧の 275 kV 超電導ケーブルを開発

〜火力発電所 1 基分の電力を超電導ケーブル 1 回線で送電可能〜

 _古河電工、国際超電導産業技術研究センター_

 


 古河電工と国際超電導産業技術研究センターは、世界最高の電圧階級となる 275 kV 超高圧超電導ケーブルを開発したと発表した (http://www.furukawa.co.jp/what/2011/kenkai_110621.htm) 。記事によると、今回開発した 275 kV 超電導電力ケーブル ( 図 1) は YBCO 線材を用いた超電導ケーブルで、電圧階級として 国内での開発実績 (66 kV) に比べて 4 倍の電圧で、世界の開発実績 (138 kV) に比べて 2 倍の電圧を実現し、その送電容量は 1500 MW (275 kV, 3 k A) となり、火力発電所や原子力発電所 1 基分の電力を、超電導ケーブル 1 回線で送電することが可能である。
  また、 3 kA の通電における交流損失も、これまでの世界記録 0.23 W/m の 50% となる 0.12 W/m を達成しており ( 図 2) 、現用の CV ケーブルに比べても、送電損失を 4 分の 1 に低減できるとのことである。同時に、 275 kV 気中終端接続部 ( 図 3) の開発にも成功しており、複合がい管を採用することで磁気碍管を用いた気中終端に比べ、長さで 80% 、重量で 20% の軽量化・コンパクト化を実現したそうである。
  これまで古河電工で開発してきた 66 〜 77 kV 超電導ケーブルは、そのコンパクト性から都市内部の地中送電線への応用を想定しているものであった。今回開発した超電導ケーブルは、発電所から都市部までの基幹送電線で用いられる一般的な電力線の代替需要を見込めるものであり、その長さもケタ違いのものである。実際に、海外においてもネクサンスは 138 kV のケーブル開発を、韓国でも 154 kV の開発を行ってきており、その電圧階級を大幅に向上させたものである。実際、新開発のタイプはケーブルを包む絶縁紙を改良し安全性を向上させており、電圧を一気に高められる。古河電工はより電圧が高い新型超電導ケーブルの採用が進めばエネルギー効率も高まり、発電による二酸化炭素 (CO 2 ) 排出量の削減にもつながると発表している。
  これについては、古河電工での開発責任者である向山晋一部長によると、「これまで、超電導電力機器については、低電圧大電流が良いと言われてきていた。電力系統をゼロから作るのであれば、超電導に適した電圧階級と電流を選ぶことができるが、実際は既に構築された系統に導入することになり既存の系統にマッチする仕様が必要である。今回の開発で、超電導ケーブルとして中圧 (10 kV 〜 25 kV) 、高圧 (66 kV~154 kV) 、超高圧 (220 kV~275 kV) とすべての電圧階級がそろった。それぞれ、国や地域で超電導ケーブルへの要求も異なるなかで、超電導ケーブルの高電圧化ができたことは、多くの電力事業者に関心を持ってもらいその早期の実用化が期待できるのではないかと考えている。」とコメントしていた。
  275 kV 超電導ケーブルの要素技術開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) から 2008 年より受託した「イットリウム系超電導電力機器技術開発プロジェクト」の一環として実施達成されたもので、その研究費は 3 年間で 2 億 9 千万円と記載されている。 ( ネアンデルタール人 )

 

図 1. 275 kV イットリウム系超電導ケーブル

 

図 2.  イットリウム超電導ケーブル導体の交流損失

 

 

図 3. 275 kV 気中終端接続部