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SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.19, No6, December, 2010

ビスマス系超電導線・年産 1,000 km 、および臨界電流 250 A のその後の展開＿住友電工＿

　2010.11.25 付けの日本経済新聞第 1 面に「超電導線を量産」の記事が掲載され、高温超電導の最近の動向が世の中の多くの方に示されたことはこの世界で働いているものにとっては幸いなことであった。記事とその後の情報収集によると、住友電工のビスマス系超電導線は日本に限らず欧米・アジアにおける顧客からの信頼感を得て着実に出荷量が増えており、年産 1,000 km への量産規模拡大に踏み切ったようだ。信頼感のもとは、性能の高さと均一性、長尺性、応用製品としての信頼性、コストパファーマンスにあるようだ。
　最近の発表では、 NEDO の「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」において東京電力・旭変電所にて系統連係する超電導ケーブル、中部大学・ 200 m 直流ケーブル、ロシア・ VNIIKP 社のケーブルプロジェクト ( 線材約 30 km) 、中国科学院電工研究所が中心の 10 kA ・ 380 m 直流ケーブルプロジェクト ( 線材約 40 km) 、のほか各種マグネットや超電導モータへの用途開発が進んでいるという。
　さて、住友電工からビスマス系超電導線の臨界電流が 250 A 級と大幅な向上が最近発表されている。 ASC2010 、 ISS2010 の中島隆芳氏、低温工学・超電導学会での菊地昌志氏のビスマス系超電導線の臨界電流向上の発表から見てみると、今回の I c 向上のメカニズムは以下のように考えられる。
• 本質的に、金属組成の異なる Bi2223 相が生成していることを示唆しており、理想的な金属組成に近づいたことによる高い T c ,onset を実現している、② Bi2223 結晶の配向性は従来の I c =180 A 級と同等であるが、 I c =180 A 級の線材は 2.3 K の転移幅であったが、 I c (77 K)=241 A の線材は 1.8 K という小さな超電導転移幅を示している。これらのことから、粒内特性の改善とともに優れた粒間特性をも具備しているようだ。
　冷凍機冷却を想定した高磁場マグネットへの応用に関しても、テープ面に垂直の磁場下で 30 K, 3 T において 277 A 、 20 K, 3 T において 423 A と高い I c を示している。この値は、 YBCO 線材 (4 mm 幅、 77 K, sf で 160 A) の同一条件での I c である 180 A (30 K, 3 T) 、 240 A (20 K, 3 T) に比べ 1.5 倍から 1.8 倍程度の高い I c であり、ケーブル用のみならず高磁場マグネット用にもビスマス系超電導線が好位置をしめているのではないか、ということを示している。
　今後は、現在確認できている数十 m 長尺での 230 A 級を発展させて km 級の線材試作を進めるとともに、さらなる I c 向上 (300 A 化 ) に向けて開発を加速するとしている。
　高温超電導も発見から 24 年となり事業としての可能性をかいま見ることができるようになったのでないか、と感じる。関係者の皆様の努力に敬意を表したい。産官学の協力体制も新しい産業を創る、との意識無しでは順当に育つことは出来ない。今まで以上の日本あげての力を発揮していただきたい、と切に思う。　 ( ハナマルキ )