SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.18, No6, December, 2009

 


<会議報告>
《国際超電導シンポジウム(ISS2009)11/2~4 ―つくば国際会議場―》

 以下には基調講演に関する報告を掲載した。各分野の報告の詳細は超電導Web21の12月号(12月1日発行)に掲載されている。(http://www.istec.or.jp/Web21/index-J.html)


【基調講演】

 初日に行われた基調講演は2つの特別講演を含む8件であり、その内容は材料基礎が1件、物理関係が1件、応用材料が2件、電力機器応用が3件、応用計測が1件であった。
 まず、Hosono(東京工大)は昨年からスタートした鉄砒素系超伝導体の結晶構造から超伝導特性にわたるまでをこの分野の第一人者として広く一般的に解説した。そして最近の研究動向、一層の高臨界温度が得られる可能性、応用にあたって着目される薄膜材料の特性などを講演した。
 物理関係としては、Iwasa(東北大)が超伝導体(固体)と液体との接触界面を利用することにより高い電界を加えて誘起される超伝導現象について紹介した。特異な現象であるが、最近、15 Kの臨界温度が記録されており、今後、新しい応用の可能性を秘めたものとして期待される。
 Diko(SAS実験物理研)はYBCOバルク超伝導体の種結晶溶融成長過程において123相の成長とともに押し出される211相粒子に着目し、生じる微細構造とクラック、ならびに熱処理の際の酸素の侵入の様子などを詳細に解説した。また、ドーピングにより導入した微小粒子のピンニング特性についても紹介した。ついでIzumi(ISTEC)はこれまでに日本でNEDOプロジェクトを中心として行われてきたコート線材の開発研究の進展具合について詳細に報告した。高性能化に加え、とくに線材の低価格化を意識した高速製造技術の開発により目標達成の目処が立ちつつあることが示された。
 超伝導機器への最近の応用については、Marken(Los Alamos国立研)が米国の、Tixador(Grenoble技術研)がヨーロッパの、Fujiwara(ISTEC)が日本の情勢をそれぞれ詳細に報告した。応用機器は電力ケーブル、限流器、変圧器、電動機、発電機、エネルギー貯蔵装置など広い範囲に亘っており、全世界的に超伝導応用のスピードが加速されている印象を強く受けた。
 Espy(Los Alamos国立研)は核磁気共鳴とは異なった、mTから T領域の超低磁界での磁気共鳴を利用していろいろな計測ができることを示した。パルス磁場を用い、SQUIDを用いることでSN比を確保できるため、こうした計測が可能という。これにより、軽量で手軽な医用機器としての利用など、新たな計測の分野の広がりが期待される。    (九州工業大学 松下照男)