SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.18, No6, December, 2009

 


All-HTS磁石で10.4 Tを発生! _フロリダ州立大国立強磁場研、SuperPower_


 Super Power社とフロリダ州立大の国立強磁場研(以下NHFML)は最近、全高温超伝導のマグネットによる磁界の世界記録樹立を発表した。この記録は、約600m長のYBCO線材を用いたコイルにより達成され、高温超伝導体のみの電磁石として10.4 Tを発生したと報道されている。(Superconductor Week誌2009年10月28日号Vol. 23, No. 20)
 「これらの試験に続いて、国立科学財団(NSF)は32 TのYBCOマグネット開発のためにNHMFLに2 Mドルを配分した。NHMFLは、今や全超伝導32 Tコイル、即ち世界最高磁界の超伝導マグネットを建設する資金(約33%)が与えられている。現在の世界記録は、Bruker社らが最近出荷した1 GHz NMRマグネット(約24 Tで動作する)である。我々は、この導体技術が30 Tを超える磁界を発生する全超伝導マグネットを建設するのに使用できると確信している。30 Tを超える磁界は、従来の24 Tまでしか使えなかったNbベースの超伝導マグネットに対しては大きなゲインである。」とNHMFL主席材料科学者のD. Larbalestier氏は述べた。
 YBCOコイルはまた、NHMFLの大口径マグネットに内挿し、19.9 Tのバックアップ磁場下でテストする場合には7.5 Tの磁界が発生できるのでより現実的な試験が可能である。27.4 Tの累積磁界は、高温超伝導マグネットを大口径マグネットの中で11年間テストしてきて到達した最高磁界である。「大口径マグネットの使用は、超伝導コイルのより現実的なテスト・ベッドである、というのはいまや我々はYBCOの能力をテストしており、高温超伝導体のみが動作する領域に入りつつあるからである」とLarbalestier氏は付け加えた。NHFMLのマグネットは30 Tより高い磁界を達成できるが、そうするためには莫大な量の電力を必要とする。常伝道マグネットを動作させる平均コストは、1時間当たり774ドルで、一方20 T超伝導マグネットの平均運転コストは 18.75ドル/時間である。超伝導マグネットは、数分の1の費用で数日ないしは数週間運転できる。
2008年10月、NHMFLは40 m長のYBCO導体を巻いた2.8 Tコイルをテストし、NHMFLの小口径31 Tマグネットでテストしたとき33.8 Tを達成した。これら2つの記録は、YBCO導体はスケールアップでき、電流を運び、非常に高い磁界の応力を支持できることを示している。「Nb3Snは現在最高のHc2材料であるが、Hc2近くの限界動作を強いられており、高い磁界にはより高いHc2材料が必要であり、YBCOはNb3Snの3倍以上の100 Tを超えるHc2を有している」とLarbalestier氏は語った。
 NHFMLでコイル試験の面倒を見ているH. Weijers氏は、「高温超伝導体とくにYBCO超伝導体は、急速な進歩を見せており、30 Tは挑戦的目標ではあるが物質本来の限界はるかに高い値である。今後R&Dを続けるならばもっと強力な全超伝導マグネットが可能である」と語った。Larbalestier氏は、NHMFLが最近関与している大きな超伝導プロジェクトについてコメントした:ここには、マグネット技術のための理解と導体開発を目指す多くのR&D計画が存在する‐ITERの為のNb3Sn、高エネルギー物理応用のためのBi-2212と高磁界及び電力ユーティリティ向けのYBCOなど。
 NHMFLは、学生職員及び客員科学者及び技術者が研究のために使う高磁界施設を開発し、運営する。NHMFLは、NSFとフロリダ州から後援を受け、活動している。         (高麗山)