SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.18, No6, December, 2009

 


心筋梗塞モデルマウスの異常心磁図計測に成功!       _早稲田大学、産総研_


 早稲田大学と産総研のグループは、小動物用SQUIDシステムを開発し、2003年末に世界で初めてマウスの心磁図(MCG)計測に成功した(図1:マウスMCG測定風景。Y. Ono, A. Ishiyama, N. Kasai, K. Chinone "Development of biomagnetic measurement system for mice with high spatial resolution", Applied Physics Letters, 85(2), pp.332-334, 2004)。

図1 マウスMCG測定風景

 その後早稲田大学では、本開発装置を用いて、心筋梗塞モデルマウスのMCGを、生後間もない時期から経時的に計測する試みを行ってきた。そしてこれまでに、健常なマウスと不整脈を誘発したマウスのMCGが、それぞれ健常なヒトのMCGとヒトの不整脈発生時のMCGに類似していること、MCGによって疾患の発生が検出できる可能性があることを明らかにしてきた。そこで、心筋梗塞モデルマウスのMCG(磁場コンターマップ)に異常が計測された時点(図2参照。マウスAでは、10週齢時でS波時刻の磁場の吸い込みと湧き出しが9週齢時と比較して90度回転。マウスBでは、T波時刻において同様の変化を観測)において、該当するマウスの心エコー検査、血行動態検査、病理解剖検査を行い、心臓の異変状態や箇所を調べた。その結果、磁場コンターマップに異常が出現したマウスの解剖結果において、心筋梗塞の進行と思われるような症状が確認された。図3は心臓のスライス、図4はその拡大図である。マウスAでは冠動脈が太くなり、心室壁が肥大化していた(図3)。また図4より組織変成が進行しており、○印の部分に血液の浸潤が確認された。マウスBでは、同様に心室壁の肥大化が観測され、左心室において図4の○印の部分に組織の繊維化が観測された。

 

図2.MCG (磁場コンターマップの経時変化)

 

    マウスA      マウスB      健常マウス     

図3.心臓のスライス

   

                    マウスA                             マウスB

                             図4.心臓のスライス図拡大図

 早稲田大学のグループは、小動物用SQUIDシステムを、心疾患の発生機序の解明や薬効の検証のための有効な検査法とするため、さらに症例を増やし再現性確認を行うとともに、MCGデータから疾患部位の同定をするための逆問題解析手法の開発を進めている。 (ワセ虎)