SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.18, No4, August, 2009

 


FeAs系超伝導体のユニークなメカニズムについて理論化を行う!      _NRL_


 オークリッジ国立研(ORNL)の2人の研究者と共同研究している海軍研究所(NRL)の2人の科学者は,新しい超伝導状態がFeAs系超伝導体中に実現していることを提案した。彼等は、この新しい状態をs±と呼ぶ。ここでオーダー・パラメーターは古典的超伝導体と同様すべてs波である。しかしオーダー・パラメーター(超伝導ギャップ)は、輸送に関与する2グループの電子に対してMgB2のごとく異なった大きさを有する。また、酸化銅超伝導のごとく符号を変えると言う。(Superconductor Week誌2009年6月24日号, Vol. 23, No. 9)
 従来のBCS超伝導体では、超伝導性は電子−イオンの相互作用に起因し、超伝導オーダー・パラメーターはすべての電子に対して同じであり、かくしてs波である。高Tc銅酸化物においては、超伝導性は電子―電子相互作用(磁気的あるいはクーロン作用)から発現すると考えられている。従来超伝導とは対照的に、銅酸化物のオーダー・パラメーターはd波であり、電子の動く方向により符合が変わる。
「我々の研究は、3月の日常的業務の中でなされ、NRLにおける資金援助は現在も続いており、それによってこれら新しい発見を開拓できる専門性を創造した。同時に、資金援助の財源についてもDOEから最近12億ドルの科学分野への支出が決まったように明るさが出ている。我々の仕事は、超伝導現象はスピンの変動によって起こるという仮定に基いている。フェルミ面に注目し、スピン変動の構造について熟慮した推測を試みている。主要な構造はもっと複雑な計算においてもっと力強いことを発見した。」と本プロジェクトに関与しているI. Mazin氏は語った。
 実験的証拠は、NRL研究者の提案に有利な方向に集積している。この主題に関する彼等の論文は他の論文及びプレプリント中に200回以上引用されている。2001年MgB2の超伝導体発見の直後、NRLの理論家はMgB2はオーダー・パラメーターがs波であり、決して符号をかえないが異なった電子群で異なった運動量を持つマルチギャップ超伝導体の最初の実例であると提唱した。超伝導メカニズムは依然として電子−イオンの相互作用によるものである。
 銅酸化物の超伝導現象は、符号が変わるオーダー・パラメーターを持つd波であると考えられ、電子-電子交互作用から発現している。FeAs系超伝導体の発見後すぐに、新化合物の超伝導は銅酸化物ないしMgB2に全く似ておらず、Feの強い磁性は重要な役割を果たしそうである。「最も重要な事は、イオン基超伝導体の発見は銅酸化物が単独ではない事を示した。この20年間、ただ1種類のHTS材料として存在し、銅酸化物は超伝導体の中のユニークな変種かもしれないかについては疑問があった。まったく新しいクラスの発見は巨大な概念的価値を持つ。その上、イオン基超伝導体のあるものは酸化物と異なりほぼ3次元的である、これは応用には有利である」とMazin氏は語った。
NRL研究者は、Fe系超伝導体の通常状態について異例のシナリオを提案した。彼らは、Feイオンはフェロニクタイド中では常に磁性を持つが、観測される磁気モーメントは強く減少するか、あるいはアンチフェロ磁気ドメインの形成により完全に抑圧される事を示唆した。観測しうる長距離秩序は、其の領域が大きくそれらの壁がピン止めされているときのみ現れる。領域の境界が支配的に逆位相であるとき観測可能な長距離磁気作用無しの構造的遷移が起きる。其の結果x/yシメトリーは破壊され、長距離秩序は最早存在しない。長距離磁気作用もなく、構造的歪みもない状態が観測される超伝導構成物は動的境界を持つ小さな双晶領域に対応する。                      (高麗山)