SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.18, No4, August, 2009

 


SUPERCOM100号に思うこと


 SUPERCOMが創刊されたのは1992年の12月である。その年に生まれた子供も、すでに17歳となっている。よく育ったなという感慨もあるが、よくぞ、ここまで続いたなという感想のほうが強い。紐解くと、その創刊号には「WCS92賞がISTECとSRL村上雅人氏へ」という記事が載っている。ドイツのミュンヘンで開かれた超伝導国際会議で賞をいただいたことを思い出す。
 SUPERCOM創刊当時は、超伝導研究はさかんではあったが、商業誌としての日経超電導が廃刊になるということで、超伝導コニュニティに少なからぬショックを与えたことを記憶している。当時、東大教授であった北澤先生がニュースレターの継続は必要ということで、SUPERCOMの創刊を決意された。英断であったと思う。その後、岸尾先生が引き継がれ、いまに続いている。
 最近気になることがある。それは、本原稿を依頼された下山先生も言っていたことであるが、超伝導コニュニティの平均年齢が高くなったという事実である。以前は、若い研究者が多数、超伝導研究に従事していた。国際会議のポスター発表でも日本の若手が目立っていた。ヨーロッパの研究者からうらやましがられたことを覚えている。
 どの世界でも同じだが、若い血 (Young blood) を入れるというのは、分野が発展するためには不可欠である。ところで、若いねずみの血を輸血した高齢のねずみの筋肉が著しく回復したという話を聞いたことがある。医学的にも、若い血の注入は重要なのかもしれない。
 最近、超伝導の医療応用がさかんになっている。再生医療に威力を発揮しそうだという報告もある。その発展が、超伝導分野の活性化につながり、SUPERCOMを引き継ぐ若手が多数登場することを祈っている。                                  (芝浦工業大学 村上雅人)